はじめに
株式会社Scentier代表の加藤です。
私は文系出身で、エンジニアリングのバックグラウンドは一切ありません。
CLIベースのAIツール——いわゆる「AIコーディングエージェント」が登場し始めた頃、興味本位でターミナルという黒い画面を初めて開きました。「cd」というコマンドが何をするものかすら知らない状態。正直、画面を見ただけで拒否反応が出るレベルでした。
今では、7〜8件のクライアント案件を常時同時進行で回しています。データ分析、レポート作成、提案書のドラフト、Webサイトの構築——すべてAIを「実装レベル」で使って。
これは才能の話ではありません。正しい順番で、正しいことをやっただけです。
この記事では、非エンジニアの私が「AI実装」をどうやって自分のものにしたのか、その過程をお話しします。
最初の壁:ターミナルという「異世界」
AIを業務に実装する——その入口に立ったとき、最初に直面したのは「ターミナル」でした。
エンジニアの方には信じられないかもしれませんが、私にとって黒い画面に白い文字が並ぶあの画面は、完全に異世界でした。マウスが使えない。フォルダをクリックで開けない。「cd」と打ってEnterを押すと何かが起きるらしいが、何が起きているのかわからない。
でも、ここで重要な気づきがありました。
私がターミナルを「使いこなす」必要はなかった。
なぜなら、Claude Codeというツールは、ターミナルの中で動くAIだからです。私がやることは、ターミナルを開いてClaude Codeを起動し、やりたいことを日本語で伝える。それだけ。
「cd」コマンドを覚える必要はありませんでした。「このフォルダに移動して」と言えば、AIが勝手にやってくれるから。
「触る」から「任せる」へ
最初の数日間は、おそるおそるでした。
「これ、お願い」と言ったら本当にやってくれるのか。ファイルを壊したりしないか。見当違いなものが出てきたりしないか。不安だらけでした。
でも、実際にやってみると、驚くほどまともなアウトプットが返ってくる。
最初にやったのは、取引先のフォルダ構造を整理することでした。これまで自分の頭の中にしかなかった「どのクライアントに、どんなスコープで、何を提供しているか」という情報を、AIに伝えて構造化してもらった。
ここで最初のブレイクスルーが起きました。
AIは「作業を代わりにやってくれる道具」ではなく、「自分の思考を構造化してくれるパートナー」だと気づいた瞬間です。
頭の中のモヤモヤを言葉にして投げると、整理されて返ってくる。それを見て「いや、こっちの方がしっくりくる」と修正する。そのやり取りを繰り返すうちに、自分の業務の全体像がクリアになっていきました。
「型」を作る
「AIに任せられる」という感覚を掴んだ後、次にやったのは仕組み化でした。
毎回ゼロからAIに説明するのは面倒です。「このクライアントのデータ分析をするときは、こういう手順で、こういうフォーマットで」という型(スキル)を作り始めました。
具体的には:
- データ分析の型: データを渡したら「数値→要因→考察→ネクストアクション」の構造で分析する
- 資料作成の型: 構成案を出す→承認を得る→スライドを生成する、という3ステップ
- 品質チェックの型: 「この資料を読むのは誰か」を基準に、成果物をチェックする
これらの型を一度作ってしまえば、次からは「先月と同じ形式でレポートを作って」と言うだけで済む。
ここが、「チャットで使う」と「業務に実装する」の分岐点でした。
チャットで使う人は、毎回ゼロから聞く。実装する人は、一度作った型を再利用する。この差が、生産性の差に直結します。
生産性は、5倍〜10倍になった
大げさに聞こえるかもしれませんが、数字で見ると明らかです。
| 業務 | Before | After |
|---|---|---|
| 週次レポート作成 | 半日(4時間) | 30分以下 |
| 提案書ドラフト | 1〜2日 | 2〜3時間 |
| Webサイト構築 | 外注で数十万円+数週間 | 自分で数時間 |
| データ分析+可視化 | 半日〜1日 | 1〜2時間 |
しかも、これは「スピードが上がった」だけではありません。
アウトプットの質も上がっている。なぜなら、AIが分析のモレやロジックの飛躍を指摘してくれるから。人間1人で作っていたときよりも、構造的に整理された成果物が出てくるようになりました。
空いた時間で何をしているか。考えることです。
「このクライアントに本当に必要なのは何か」「次に提案すべきことは何か」——AIに作業を任せた結果、ようやく本来やるべき「考える仕事」に時間を使えるようになりました。
エンジニアリングスキルは、本当にいらなかった
ここまで読んで、「それでも自分には無理だ」と思っている方がいるかもしれません。
断言しますが、私はいまだにコードを書けません。
Pythonの文法も知らない。HTMLの構造も理解していない。JavaScriptに至っては、何がどう動いているのか説明できません。
でも、このWebサイトはAIと一緒に作りました。クライアントのデータ分析も、提案資料も、業務フローの自動化も、全部AIと一緒にやっています。
必要だったのは、たった1つのスキルだけでした。
それは、「何のために、何をやるか」を言語化する力です。
「このクライアント向けに、先月の広告配信データを分析して、来月のアクションにつなげるレポートを作りたい」——こう伝えれば、AIは動きます。
逆に言うと、「なんかいい感じにして」では動きません。ここだけは、人間がやる仕事です。
振り返って思う「順番」の大切さ
私の経験を振り返ると、3つのフェーズがありました。
フェーズ1:触れる
まずはAIを動かしてみる。何でもいいから、1つ仕事を任せてみる。完璧じゃなくていい。「お、動いた」という体験が一番大事。ここは思ったより早く通過できます。
フェーズ2:型を作る
うまくいったやり方を「型」にする。毎回ゼロから聞くのをやめて、再利用できる仕組みにする。ここで生産性が一気に跳ね上がる。
フェーズ3:考える時間を取り戻す
作業から解放されて、初めて「本来やるべきこと」に集中できるようになる。事業の方向性、クライアントへの提案、新しい打ち手。ここがゴール。
多くの人がフェーズ1で止まっています。「AIを触ってみた。便利だった。でも、それだけ」。
フェーズ2に進めるかどうかが、生産性5倍の分岐点です。
あなたが今日からできること
最後に、私の経験から言える「最初の一歩」をお伝えします。
1. 「自分でやらなくていい仕事」を1つ見つける
1日の業務を振り返って、「これ、私じゃなくてもいいよな」と思う作業を1つ選んでください。レポート作成、議事録の整理、データの集計——何でもいい。
2. AIに「やってみて」と頼む
完璧な指示を出す必要はありません。「こういう仕事があるんだけど、手伝ってくれる?」から始めればいい。AIは「何がわからないか」を聞き返してくれます。
3. うまくいったら「型」にする
一度うまくいったら、そのやり方を保存しておく。次に同じ仕事をするとき、ゼロから始めなくて済みます。
ターミナルに拒否反応が出るレベルだった私が、ここまで来られた。あなたにできないはずがありません。
まとめ
- エンジニアリングスキルは不要。必要なのは「何のために、何をやるか」を言語化する力
- 最初の壁は思ったより低い。すぐに「触れる」状態になれる
- 「型」を作ることで、生産性は5倍〜10倍に跳ね上がる
- ゴールは「作業の効率化」ではなく「考える時間を取り戻す」こと
AIは、あなたの仕事を奪うものではありません。あなたが本来やるべき仕事に集中するための、最強のパートナーです。
